一般社団法人白浜振興推進協会(shirahama+)には、法人として登記するずっと前から続けている活動があります。白浜町椿にお住まいの90歳を超えるご婦人のもとへ、ほぼ毎日お昼ごはんをお持ちして顔を見に行く、それだけの取り組みです。事業計画があったわけでもなく、補助金をいただいているわけでもありません。たまたまお話をする機会があり、その関係が途切れずに3年ほど続いてきただけのことです。

ただ、この地味な積み重ねのなかで、私たちは何度か危険な場面を未然に防ぐことができました。そして予想していなかったことに、私たちが誰にもお願いしていないところで、同じように気遣ってくださる方が少しずつ増えていきました。ここでは、その経過と、そこから見えてきたことを率直に書いておきたいと思います。立派な福祉活動の報告ではなく、普通の人間が普通にできることの記録として読んでいただければ幸いです。

偶然の立ち話から始まり、3年続いた

始まりは本当に偶然でした。椿地区にお住まいのご婦人と、何かの用事で何度かお話をする機会があった、それだけです。最初はお互いまったくの他人同士でした。顔を合わせるうちに自然と世間話をするようになり、気づけば理事や会員、関係者が交代でお昼ごはんをお持ちしてうかがうことが日常になっていました。

していることは、きわめて単純です。お昼を持っていき、少し話をして帰る。介護でもなければ生活支援でもなく、「支援」と呼ぶのもためらわれるような、ごく普通のやりとりが毎日繰り返されているにすぎません。それでも3年続いたのは、誰かひとりが背負っていないからだと思います。複数の人間が交代で、たまたま近くを通る日に立ち寄る。そのくらいの気軽さだからこそ、無理なく今日まで続いてきました。

長く続ける秘訣があるとすれば、それは意気込まないことなのかもしれません。使命感で始めたことは、どこかで息切れします。ただの顔なじみとして通っているだけだから、こちらも疲れないのです。

毎日顔を見ているからこそ、気づけたことがある

この3年のあいだに、何度か転倒されていたり、危ない状態になっていたところを発見したことがありました。そのたびにすぐご家族へご連絡し、幸いこれまで大事に至ったことは一度もありません。これは私たちが何か優れた判断をしたわけではなく、ただ毎日顔を見ていたから気づけたというだけの話です。

ご高齢の方が一人で暮らしておられる場合、何かあってから発見されるまでの時間が、その後を大きく左右します。週に一度では気づけないことが、毎日だと気づけます。逆に言えば、毎日でなくても、誰かが定期的に様子を見る仕組みさえあれば防げる事故は少なくないはずです。「変わりないかどうか確かめる」という当たり前のことに、どれほどの重みがあるのか。私たち自身がこの3年で教えられたことでした。

そしてもうひとつ。この取り組みは、うれしい形で広がってきました。私たちがお願いしたわけではないのに、話を聞いた方が見回りに立ち寄ってくださるようになり、活動を知った方が椿に行くたびにお土産を持っていってくださるようになりました。誰にも頼まれていないところで、気遣いの輪が静かに広がっていったのです。幸せはひとりで抱えるものではなく、まわりに移っていくものなのだと実感しています。

できることには、はっきりと限りがある

ここで、正直にお伝えしておかなければならないことがあります。この取り組みは、特定の方を特別に支援する制度ではなく、どなたにでもご利用いただける見守りサービスでもありません。たまたま縁があり、お互いに顔の見える関係が続いたからこそ成り立っているものです。同じことを地域のすべての方に対して行う力は、残念ながら私たちにはありません。

白浜町内に、同じようにお一人で暮らしておられる方が他にもいらっしゃることは承知しています。その方々に手が届いていないことを、良いことだとは思っていません。ただ、できないことを数えて何もしないより、できる範囲で確実に続けるほうがいいと考えて、今の形を選んでいます。また、この活動は公的な福祉サービスの代わりになるものではありません。介護や医療が必要な場面では、専門の窓口や制度に頼るべきです。私たちがしているのは、その手前にある「ただの近所付き合い」の部分です。

それでも3年やってみて、ひとつだけ確かだと思えたことがあります。元気な人が、たとえ相手が他人であっても、ほんの少し気遣って、それを続ける。これだけで救われる人がいるということです。

まとめ:まずは、挨拶から

毎日でなくてかまいません。お昼ごはんを届けなくてもかまいません。近所にお一人で暮らしている方がいたら、通りがかりに声をかける。しばらく姿を見ていないと思ったら、少し気にかけてみる。それくらいのことが少しずつ重なって輪になっていけば、きっとたくさんの人が救われます。

私たちが特別なのではありません。できることから始めて、やめなかっただけです。椿の小さな一例が、どこかの地域の誰かが一歩踏み出すきっかけになれば、これ以上のことはありません。まずは挨拶から。その一歩が、まちの安心につながっていくと信じています。

ご家族や地域の方で見守りについて気がかりなことがあれば、当協会でもお話をうかがいます。できることには限りがありますが、必要に応じて白浜町の福祉窓口や地域包括支援センターへのおつなぎも含めてご相談をお受けしています。